女性の出産と薄毛
2023.09.19
妊娠中や授乳中に生じる一時的な薄毛は、ミノキシジルによる治療ではなく、食生活や生活習慣の見直しで改善できます。
出産後の体の変化を理解して、セルフケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
産後脱毛症とは?
みなさんは「産後脱毛症」もしくは「分娩後脱毛症」という言葉をご存じでしょうか。
読んで字のごとく、出産後に一時的に抜け毛が急増する症状を指します。
女性は妊娠するとエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンが増加します。妊娠28~32週間後になるとエストロゲンは約100倍、プロゲステロンは約15倍あるといわれており、女性ホルモンの分泌量は妊娠していない時期と比較して大量に分泌されていることがわかります。
これらの女性ホルモンが増加すると、髪の毛はヘアサイクルの「成長期」を維持します。このため、妊娠中は抜け毛がほとんど気にならず、むしろ髪の毛が濃くなり、ツヤやハリを保っていることが多いのです。
しかし出産後は、一転してこのホルモンが急激に減少するとともに子宮や骨盤は妊娠前に戻っていき、個人差はありますが産後半年ほどかけて、徐々にホルモンのバランスが整い、また月経がやってくるようになります。つまり、妊娠時に減っていた抜け毛が、出産後の女性ホルモン量の急減により、通常のヘアサイクルに戻る過程で一気に増えてくるのです。したがって、産後に抜け毛が起こることは、出産した女性なら誰にでも起こる自然な現象といえます。
実際、産後女性の7割以上が抜け毛を経験しているそうです。これまでに経験のない抜け毛にショックを受けてしまうこともあるかもしれませんが、「出産に必要な体の変化」であることをしっかりと理解し、「今は仕方ない」と割り切ることが大切です。気にし過ぎないことで、過剰なストレスを回避することも発毛と育毛の重要なポイントです。
なお、産後脱毛症は、概ね産後2カ月ころから発生して、産後半年くらいで落ち着くケースが多いようです。
妊娠中~出産後の母体と脱毛
妊娠中の母体は、赤ちゃん優先で栄養が使用され、出産後は母乳に栄養が優先されます。すると母親自身の体には十分な栄養が行き渡らないことも多く、その結果、髪が十分に発育できなくなることがあります。また、出産後は赤ちゃんのお世話に追われ、食事がおろそかになったり、睡眠不足になったりしがちです。十分な睡眠がとれないと、睡眠中に分泌される成長ホルモンなどが髪の毛を十分に成長させてくれずに、抜け毛が増えてしまうことがあります。
また出産後、体形を早く戻そうと過度な食事制限をおこなってしまうと栄養不足になり、その結果、抜け毛が増えてしまいます。
産後脱毛症のためのセルフケア
健康な髪のため、まず出来ることとして、体全体に栄養が行き渡るようバランスのよい食生活を心がけましょう。当然、バランスが良い食事は栄養状態の良い母乳を作るので、赤ちゃんの発育にとっても良いことです。
また、出産で疲れた体を十分な睡眠でいたわることが大切です。
とはいえ育児をするにあたり、栄養が偏ったり、睡眠時間が変則的になってしまうことは、ある程度仕方のないことでもあります。
普段の食生活の改善が難しい場合はサプリメントを活用したり、睡眠不足を解消するよう努め、それが難しい場合は、睡眠の質を上げるような工夫をおこなうなど、できる範囲でセルフケアを試してみてください。
大切なのは“できる範囲で”ということですので、気を張らずに。